『わたしの願い』 小6・森琴音さん
わたしは しゃべれない 歩けない
口がうまくうごかない
手も 足も 自分が思ったとおりうごいてくれない
一番 つらいのは しゃべれないこと
言いたいことは 自分の中に たくさんある
でも うまく 伝えることができない
先生や お母さんに 文字盤を指でさしながら
ちょっとずつ 文ができあがっていく感じ
自分の 言いたかったことが やっと 言葉に なっていく
神様が 1日だけ 魔法をかけて しゃべれるようにしてくれたら・・・
家族と いっぱい おしゃべりしたい
学校から帰る車をおりて お母さんに
「ただいま!」って言う
「わたし、しゃべれるよ!」って言う
お母さん びっくりして 腰をぬかすだろうな
お父さんと お兄ちゃんに 電話して
「琴音だよ! 早く、帰ってきて♪」って言う
2人とも とんで帰ってくるかな
家族みんなが そろったら みんなで ゲームをしながら おしゃべりしたい
お母さんだけは ゲームがへたやから 負けるやろうな
「まあ、まあ、元気出して」って わたしが言う
魔法が とける前に
家族みんなに
「おやすみ」って言う
それで じゅうぶん
これは産経新聞の人気コーナー「夕焼けエッセー」に投稿された森琴音さんの
文章です。
琴音さんは3歳のとき事故で心肺停止となり、一命を取り留めたが、低酸素脳症の
重い後遺症で下半身はマヒし、声は出るのですが言葉にならなくなってしまいました。
上の文章は琴音さんの「わたしの願い」というエッセーです。
琴音さんの願い。
「魔法がとける前に 家族みんなに 『おやすみ』って言う・・・それでじゅうぶん」
それにひきかえ、私たちは動くことも、話すことも何だってできるのに、不満をかかえ
不幸をあげつらう。
この文章を読むたびに涙が出るのはなぜでしょう(仁)。